カントのメモ書き「私は無知な賎民を軽蔑していた」

カント入門
写真:カント入門
この告白の第一群は、ルソー体験にいたるまでのカント自身の自己理解を伝えている。と同時に、そこにおいてカントはそれまでの自分の学問観、価値観そして人間観を率直に回顧している。学生時代に熱心に神学を受講したのさえも、知識欲からであって信仰からではない。ニュートンは世界の半分しか解明しなかったが、自分は世界の全部を解明すると豪語したのもこの時期であった。そこには、いまだおよそ挫折を知らない知識の人カントの撥刺(ハツラツ)たる姿がうかがわれる。またそのようなありかたに対する傲慢なまでの自信が回顧されている。

(引用:カント入門


「第一群」わたし自身は根っから一個の研究者である。わたしは知識への激しい渇望と、知識をいっそう拡大したいというあくなき貪欲さと、また知識を獲得するたびに満足を覚える。これのみが人類名誉となりうる、と信じていた時期がかってあった。私は無知な賎民を軽蔑していた。

「第二群」そんな私の誤りをルソーが正してくれた。目をくらます優越感は消え失せ、わたしは人間を尊敬することを学ぶ。


「第三群」そしてもし、この考えが他のすべての人々に価値を認めて、人間性の権利を樹立しうるということを、わたしが信じないようなことがあろうものなら、私は自分を平凡な労働者よりも無知な者と見なすであろう。(『美と崇高の感情に関する観察』への『覚書』)。

(引用:カント入門
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