写真:(良寛=魂の美食家) |
明治の初期に、曹洞宗の館長をされていた久我環渓禅師に、次のようなエピソードが遺されている。
ある堂上家を訪ねると、たまたま将校が先に来て酒盛りを始めていた。一人の将校が、ちょうどよい所に来られたと、大杯の酒を勧めた。禅師はそれを一口に飲み干し、返杯した。将校たちは、この坊主を酔いつぶしてしまえと、次々に勧める。禅師は平気な顔をして飲み、さらに返杯する。そのうちに、将校連中が酔いつぶれてしまうという有様。
それを尻目に禅師は、「百万の敵も一口で呑却(どんきゃく)する将でなくては、英雄とは申せぬ。貴公らはこれしきのことで酔いつぶれるとは、平生やっていることもたかが知れているわい」一喝したという。
もう一人。原担山という、やはり曹洞宗の人で、明治初期の高僧がいた。この人は、先の久我環渓と道友でもあった。そして、東大に仏教哲学科が設けられた時の初代教授でもあった。
ある日、近代最後の律層といわれた釈雲照律師が、担山さんを尋ねた。担山さんは、ちょうど一杯やろうとしていたところだったので、「どうかね、一杯」と勧めたが、律師はとんでもないと、断った。
すると、「そうか、酒も飲めんようなものは人間ではないな」担山師が言い放つと、ムッとした律師は、「昔から葷酒(くんしゅ)山門に入るべからずと、仏戒にもあるではないか。それを人間ではないとは、何事か」勢い込んで担山に詰め寄った。
担山は平気な顔をして、「そうよ。酒を飲まなければ仏様よ」
雲照律師は、見事なまでに一本取られたわけである。
(引用:良寛=魂の美食家)
ある堂上家を訪ねると、たまたま将校が先に来て酒盛りを始めていた。一人の将校が、ちょうどよい所に来られたと、大杯の酒を勧めた。禅師はそれを一口に飲み干し、返杯した。将校たちは、この坊主を酔いつぶしてしまえと、次々に勧める。禅師は平気な顔をして飲み、さらに返杯する。そのうちに、将校連中が酔いつぶれてしまうという有様。
それを尻目に禅師は、「百万の敵も一口で呑却(どんきゃく)する将でなくては、英雄とは申せぬ。貴公らはこれしきのことで酔いつぶれるとは、平生やっていることもたかが知れているわい」一喝したという。
もう一人。原担山という、やはり曹洞宗の人で、明治初期の高僧がいた。この人は、先の久我環渓と道友でもあった。そして、東大に仏教哲学科が設けられた時の初代教授でもあった。
ある日、近代最後の律層といわれた釈雲照律師が、担山さんを尋ねた。担山さんは、ちょうど一杯やろうとしていたところだったので、「どうかね、一杯」と勧めたが、律師はとんでもないと、断った。
すると、「そうか、酒も飲めんようなものは人間ではないな」担山師が言い放つと、ムッとした律師は、「昔から葷酒(くんしゅ)山門に入るべからずと、仏戒にもあるではないか。それを人間ではないとは、何事か」勢い込んで担山に詰め寄った。
担山は平気な顔をして、「そうよ。酒を飲まなければ仏様よ」
雲照律師は、見事なまでに一本取られたわけである。
(引用:良寛=魂の美食家)
〚書籍〛高僧たちと酒
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