増える新聞活用授業 社会の最前線を読み解く


朝日大学 正解のない問題 多角的に探る

朝日大学(岐阜県穂積市)は、社会問題などをテーマにした授業「建学の精神と社会」を開設している。2013年度にスタートして7年目になる。

大友克之学長が企画。大学の「建学精神」の三つの要素である「社会性」、「創造性」、「人間的知性」を育むため、教員による専門的知見からの総論と学外の専門家による公演を織り交ぜて展開。法学部、経営学部、保険医学部健康スポーツ学科の1年生約400人が受講する。

近年日本最初の公害事件「足尾道山鉱毒事件」や「水俣病被害」のほか、「米軍基地問題」などを取り上げてきた。

朝日大学によると水俣病事件の授業では、熊本学園大学(熊本市)の花田昌宣教授が登壇し、いまも続く水俣病被害の現状などを説明した。公害問題では、学生たちに身体的弱者、社会的弱者の存在を知ってもらい、まずはその声に耳を傾けてもらうのが狙いという。

沖縄基地問題では外務省関係者が、政府の立場から基地の役割を説明し、翌週の授業では琉球大学(沖縄県)の我部政明教授が地元から見た基地の現状と課題を語った。太田昌秀・元県知事を招いたたこともある。大友学長は「社会問題について、異なる意見があることを学生に見せる授業になっている。正解のない問題に対して、自分の意見を構築していく力を育みたい」と話す。地元の首長を講師に迎え、地方創生や地元自治をテーマにする授業も多い。学生は毎回リポートを提出する。

同大学では、新聞購読も推奨。大野正博法学部長は「新聞を読み、世界の動きに関心を持ち、人生の目標やキャリア形成に役立てて欲しい」と話す。新聞記事を活用した電子教材「時事ワークシート」を活用しているほか、「ニュース時事能力検定」の受験も予定している。

北星学園 切り抜いた記事 討論

北星学園大学(札幌市)の経済学部経済学科では、1年生180人全員が「新聞活用プログラム」で学んでいる。新聞を読み、広く社会について知るとともに、文章を読み解く力を磨く。

授業では2013年度からスタートし、年間30コマに及ぶ。経済学部の原島正衛教授と勝村務准教授が担当する。原島教授は「新聞は様々な情報がコンパクトに収まっている。社会の動きを多角的にとらえ、自分の意見を持つことで4年間の学びにもつながっていく」と話す。

事前学習として毎日一つの記事を切り抜き、記事にコメントをつけて提出。これをもとに授業を展開し、討論の内容を発表する。毎回、リポート提出と添削を行う。

大坊郁夫学長は「新聞でまとまった文章を読むことで、ニュースの背景を理解し、基礎的な学力のほか、思考力や読解力が身につく。社会に出てから必要な問題解決力にもつながっていく」と話す。

同大学では、道内や全国で活躍するメディア関係者を講師に迎え、現代社会の課題の最前線を学ぶ「メディアと社会」の授業も年15回開設している。

増える新聞活用授業

朝日新聞社は東京大学、一橋大学、早稲田大学など全国30大学と提携して講座を展開している。東洋大学社会学部メディアコミュニケーション学科では1年生全員が新聞を購読し授業に取り組んでいるほか、活水女子大学(長崎市)で1年生全員が新聞を購読している。慶応義塾大学、神奈川工科大学、関西大学、京都女子大学、九州大学、長崎大学でも新聞を使った授業を実施するなど、大学での新聞活用が広がりを見せている。

(引用:朝日新聞 朝刊 2019年6月17日)
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