【診断】 道徳発達プロセス≪5段階のレベルチェック≫ 彼の行動についてどう考えるか?

教育心理学、コールバーグの道徳発達プロセス
写真:新版 教育心理学 (有斐閣新書)

癌になって死に瀕してる女性がいる。医者によれば、この患者を救う道は、同じ町に住む薬剤師の発見したラジュームを使う他はない、という。薬剤師は仕入れの10倍の価格をふっかけて非常に高価である。つまり、200ドルで仕入れて、2000ドルで販売しているのである。彼女の夫、ハインツは、お金を工面したが、1000ドルしか集まらない。彼は、薬剤師に「自分の妻は瀕死の床にいるので、安く売ってほしい」と頼むが、「ノー」という返事しか返ってこない。ハインツは、思い余って盗もうとした。彼の行動についてどう考えるか?

第一段階 

子供には一貫した道徳原理的原理はなく、多様な視点を考えることができない。つまり、善悪についての抽象的理念と実際の賞罰とが分かれていない。例えば、ラジュームを盗んだ罰よりも妻を癌から救えなかった方が罪が重いから、ハインツはこの場合は盗むべきだ、と考える。表面的に罪を軽くしたり、罪を回避することが道徳的だというのである。

第二段階 

抽象的な道徳理念があるのではなく、その時その場の目先の利益から見て善悪を判断する。例えば、ハインツの妻でも、夫が癌ならきっと同じように盗むだろう、妻が死んだら葬式の費用が掛かるので、お金を盗まなくてはならなくなる、と考える。

第三段階 

自分の目先の利益よりも他人の感情や期待に気づくようになる。具体的には、"自分の欲する所を他人に施せ"というような行動規範がわかってくる。するとハインツは妻を愛しているから盗むべきである、といったり、ハインツが盗んだとしても、裁判官は妻を愛した夫に好感いだくだろう、と思えるようになる。

第四段階 

道徳は社会的システムであるから、法律が基準になるのであり、個人的かかわりとは別であることが理解される。しかし、既存のルールが絶対視されるので、より包括的な新しい道徳基準を作り出すことができない。以下に例を示そう。ハインツがラジュームを妻のために盗まなかったとしても許されるだろう。窃盗が認められたら、社会が混乱することを考えなければならない。あるいは、結婚は互いに相手を守ることを前提にしているから、妻のために盗むことも許される。 

第五段階 

法律的観点と倫理的なヒューマニズムの観点が時に葛藤する時があることを理解できるようになる。そしてこの葛藤を努力して超えようとする。すると、人間の基本的欲求を押さえつけるようなルールを墨守することは、時に反道徳的になる、と考えるようになる。薬剤師は自分の財産であるラジュームを守る権利はあるが、女性の生きる権利にはより高い優先権が与えられているので、ハインツは妻のために盗むべきである、と主張できるようになる。こうなると、人間の福祉や幸福を促すために、既存の道徳原理や法律を超越することもできるようになっていく。


 (引用:新版 教育心理学 (有斐閣新書))


ローレンス・コールバーグ(Lawrence Kohlberg, 1927年10月25日 - 1987年1月19日)は、アメリカの心理学者で、道徳性発達理論の提唱者。wiki/ローレンス・コールバーグ
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