マザー・テレサの真実より、ボランティアと信仰について

マザー・テレサの真実
写真:マザー・テレサの真実
ボランティアと信仰について

冬の季節は日本と同様にインドも寒いのだが、1999年の2月は、いつになく寒い年だった。そのとき十二人が『インド心の旅』に参加していた。中に、国際協力にとっても関心をもっている松永友記さんという女子大学生がいた。

オリエンテーションのときから少し気になっていたのだが、ミーティングのたびにマザーテレサがどんなことを考えていたのか、本当にマザーが伝えたかったこととは何か、私が真剣に話しても、彼女は全く聞いてくれようとしない。それどころか、私がレクチャーを始めると、隣の席や前の人に話しかけ、お喋りを始めるのだった。どうしても気になり何度か注意したが、聞こうとしない。とうとう堪忍袋の緒が切れて、私は彼女に言った。

「どうしてあなたは人の話を聞こうとしないのですか」

彼女は答えた。
「私は、この旅でボランティアをするために来たのであって、神様の話やマザーテレサの信仰の話を聞きに来たのではありません。」

私は彼女に言った。
「この旅はマザーテレサが何を伝えたかったのか、ボランティアの原点をマザーテレサに学ぶ旅です。」

「でも、ボランティアと宗教の話は関係ないでしょう」

彼女は私に顔をそむけ、ふてくされて反抗の姿勢を改めようとしなかった。私は、なぜかそのとき自分の母親を思った。そしてそれがマザーテレサと重なったときに、彼女に言った。

「ここはマザーテレサの家だよ。違った宗教や価値観を持っていても、ここは、マザーテレサの家だよ。あなたは、他人の家に行って、主人が『私の家に来たら玄関で靴を脱いでください』と言っているのに、土足で家に上がりますか。主人が『ベジタリアンです』というのに、どうして肉や魚を出してくれないのですかと、不満を言いますか。」

と言って、彼女をたしなめた。答えようとしない彼女に言った。

「この旅のスローガンに『マザーテレサに学ぶ』とうたってあるように、マザーテレサが何を伝えたかったかを学ぼうとせずに、私はボランティアがしたくて来たんだという人は、この旅に参加する資格はありません。今すぐ日本に帰ってください」

さらに追い打ちをかけた。

「旅の費用は全額返します」

その時の私は本気で怒っていた。自分の母が侮辱されているような気がしたからである。

「帰国の手続きをするから、明日帰ってください」

私は繰り返して言った。

(引用:マザー・テレサの真実)

マザー・テレサの真実より、ボランティアと信仰について マザー・テレサの真実より、ボランティアと信仰について Reviewed by 管理人 on 20:44:00 Rating: 5

0 件のコメント: