対外交流心得 趙啓正・元国務院新聞弁公室主任は、歴史問題に対する態度を率直に述べた

 

会場のホテル・ニューオータニに集まったのは、自民党、公明党、民主党、共産党、社民党などに所属する議員で、ほとんどが3、40代の若手。いずれも日中友好議員連盟のメンバーであった。


自民党参議院議員の林芳正氏が、まず発言した。「現在の日中関係は『政冷経熱』といわれるが、最近では『政冷』がすでに『経熱』に影響を及ぼし始めているという言い方もあります。目下、最大の問題は、小泉首相の靖国神社参拝です。中国はとくに日本をドイツと比較しますが、大多数の日本人は、ドイツがどのようにしているかを知らないのです」


ホテル・ニューオータニで、超党派の15人の国会議員(右側)と懇談した


この発言に続いて各議員がそれぞれ短く発言をした。態度は友好的だったが、雰囲気はやや重苦しかった。このとき、趙主任がこんな話を始めた。



「中日両国は近隣で、両国の友好は双方に利益があります。例えば、日本の歴史上、多くの遣唐使が中国へ来て勉強し、中国の文化の成果を持ち帰りました。日本の文字は、中国の漢字の影響を受けて造られたものです。これは一つの面ですが、もう一方で、近代になると、中国は日本から多くの文化の成果を取り入れました。例えば、中国語の『倶楽部(グラブ)』『混凝土(コンクリート)』『物理学』『化学』『幹部』『立場』などの単語はみな日本から来たのです。20世紀初期にある人がこれを統計してみたところ、中国語には日本語からきた単語が900以上もあったといいます。また、中国の民主革命の先駆者、孫中山先生や中国近代文学の巨匠、魯迅先生もみな日本で勉強し、日本で民主の思想を吸収したのです……」


趙主任のこの話によって、会場の雰囲気はいっきょに和やかになった。


そのうえで趙主任は、歴史問題に対する態度を率直に述べた。


「現代の日本人に対して、私たちは責任を追及するつもりはありません。悪いのは一握りの軍国主義者たちであり、『江戸の仇を長崎で討つ』ようなことをしてはならないのです」

 「しかし、日本側の一部の人が、再三、戦争の古傷に触れ、中国人の心はとても痛みました。中国人は戦争の歴史に対しては非常に敏感ですが、私たちは決して仇を討つように奨励していません。しかし(歴史を問題にするのは)今日と未来のために、用心しなければならないからなのです。中国人でも他の問題ではいろいろな考え方があるかもしれませんが、戦争の歴史の問題では、人々の考え方がほとんど一致しています」


中国は、近代になって約100年以上、貧しく、弱く、いじめられて来ました。1894年の中日甲午戦争(日清戦争)で、『馬関条約』(下関条約)に調印し、中国は日本に2億両の銀で賠償を払いました。これは当時、中国の2年分の財政収入に当り、日本の3年以上の財政収入に相当します。一つの国が2年間、一銭の収入もなかったら、どんなことになるか、みなさんは想像できるでしょうか。一方、日本は、その賠償金を用いて工業を発展させ、教育を改善しました。日本の子供の教育は普及しましたが、中国の子供は学校に入れなくなりました


「1900年、義和団運動の際、8カ国連合軍が中国に侵入して、中国は敗北し、また4億5千万両の銀を賠償することになりました。当時の中国は、そんなに多くの金が一度には出せなかったため、年賦にして支払うことになりました。その後、米国のセオドル・ルーズベルト大統領は、未払いの賠償金を帳消しにし、一部分の金を中国の教育のために使い、一部分の金で大学を建てました。他の6カ国も、米国に呼応しましたが、ただ日本だけはビタ一文まけることをしませんでした


「中国の映画やテレビドラマの中では、アヘン戦争や8カ国連合軍に関する作品もありますが、日本の侵略に関することがもっとも多いです。これはこの100年来、日本がもっとも長期間にわたって中国を侵略したからです。遺恨は次の世代に伝えてはならないけれども、歴史は忘れてはならない。かつての貧しさを再び繰り返してはならないのです」


趙主任の話が終わって、座談会の会場はしばらく静かになった。一人の議員が、こう言った。私たちは確かに、こういう歴史を知らなかった。被害者と加害者とでは、受け止め方が同じではないのですね」


座談会は予定の時間を大いにオーバーした。趙主任の提案で、みんな杯を挙げた。「中日両国の友好が世々代々続きますように」。中国語ができる何人かの議員たちは中国語で、他の議員たちは日本語で「乾杯!」と唱和した。

(引用:人民中国 忘れ得ぬ中日の心の交流)


趙啓正:中国人民大学新聞学院院長・元国務院新聞弁公室主任



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